自分は、自然が好きです。その思いを満足させてくれる「旅」が好きです。
なぜ、自分は自然が好きになったのか。
それは、人の手が加わっていないものへの憧れだったのではないかと思っています。
自分は、電気回路の設計をやっていました。自分が現役の頃、たとえばデジタル回路の設計は論理回路を組み合わせて設計していました。
論理回路を組み合わせてできる集積回路は、電気を通したり通さなかったりする半導体を元に作られます。その半導体で、”1″と”0″の論理をスイッチさせるためのトランジスタ素子を構成し、それを組み合わせることによって論理演算を行う論理回路ができ、さらにその論理回路を組み合わせて、集積回路を設計します。
ここでは、単純化して説明をしましたけれども、実際には幾重にも重なった階層の技術領域があり、その一番上の階層に定義されたツールを活用して所望の機能を発揮する回路を設計するのがデジタル回路の設計者になります。
このように多くの技術階層の上に成り立つ技術を活用して設計をする設計者は、その下の階層に技術革新が起きるとそれまでの知識がまったく役に立たないものとなる場合があります。以前は、論理回路を組み合わせて回路を設計していましたけれども、ある時を境に言語による設計に変わって行きました。それにともなって、開発効率は格段に上がったものの、(非常に美しいと自画自賛してしまう)論理回路の組み合わせによる設計などは、まったく必要とされないものとなりました。
このような事例は、エンジニアの世界では非常に多く存在します。たとえば使用しているOS、アプリケーション、バージョンアップなど、自分が作業する基盤がまったく違う土俵で作業をしなければならなくなる要因は無数に存在します。これは、技術が進歩する上で避けて通れないものであると思います。
しかし、その一方でひとつのものを極めたい性格の自分にとっては、今まで活動していた基盤が無くなってしまうわけですから、非常に寂しいものがあります。
このような仕事を長年してきたこともあって、仕事を離れたら幾重もの人工的な階層を挟むことなく直接自然に触れたい(人を介在させないで真実に触れたい)という思いが強くなったのだと思っています。
自分が自然を好きになった理由のひとつです。