コラム

人間の身体

人間の細胞の数は、どれくらいあるかご存知でしょうか。

約60兆個です。

ものすごい数だと思います。しかし、これらの細胞は1年経つとすべて入れ替わってしまいます。胃や腸などの消化器は3から5日、皮膚で28日、比較的長いもので骨の細胞があり約半年で入れ替わります。

自分は会社を辞めて半年になりますので、サラリーマンをしていた時の自分の身体は細胞レベルでみるとほとんど残っていないことになります。そう考えると名実ともに生まれ変わった自分がここにいると思います。なんと素晴らしいことでしょうか。

せっかくですので、身体の神秘についてもう少しお話をしましょう。では、一つの細胞に含まれる遺伝子情報は、どれくらいあると思いますか。

約30億です。

アデニン(Adenine)を初めとする、これら4つの塩基の組み合わせでこの絵にあるような遺伝子情報が構成されています。約60兆ある細胞の一つひとつに同じ30億もの遺伝子情報が組み込まれています。人の身体にある遺伝子情報の量はものすごい数になります。しかし、これらの遺伝子情報をすべて取り出しひとまとめにしてもコメ粒くらいにしかなりません。遺伝子情報は、電子顕微鏡で見ても見ることはできないのです。化学反応を使って読み取っていきます。

では、これらの遺伝子のうち働いている遺伝子は、どれくらいの割合でいると思いますか。 少し話がそれますけれども、遺伝子と言えば、遺伝情報を子孫に伝える役割をするものだと一般的には思われています。遺伝子の働きはそれだけではありません。このようにものを考えたり、手を動かしたりする動作のすべてに酵素が関係しています。そしてその酵素に働きかけるのが遺伝子で、24時間休むことなく働いています。

では、この働いている遺伝子の割合ですが、どれくらいあると思いますか。

5〜10%くらいしかありません。あとの遺伝子は何をしているのかと言いますと眠っているらしいのです。人間の遺伝子には、太古の魚の遺伝子や肥虫類の遺伝子が入っていることが分かっています。また、ドイツのヘッケルという学者が1866年に提唱した「発生反復の法則」によれば、人は受精して生まれるまでの間に魚の形など、これまでの進化の歴史をたどって生まれてくると言われています。

46億年前に地球が誕生しました。そして10億年経った頃、生物が誕生しました。生物が誕生して10億年の間、生物はメスだけでした。メスだけで子孫を繁栄させることができました。10億年がたって酸素濃度も上がってきたころ、オスが誕生しました。メスからオスが誕生したのです。

先ほど、誕生前に進化の過程をたどると言うお話しをしましたけれども、人間も受精をして7週めまでは、女性として成長します。7週目まではみんな女性なのです。7週目にSRY遺伝子のスイッチがオンになると、そこからオスへの作り変えが始まります。せっかく女性として成長している身体を、あえて壊し男性へと作り変えが行われるのです。詳細は、割愛しますけれども、詳しく知りたい人は、分子生物学者の福岡伸一さんの「できそこないの男たち」と言う本を読んでみてください。そこに詳しく、しかもドラマチックに書いてあります。

生物の基本形は、メスであり、オスは、メスを作り変えてできたものなのです。言ってみれば、何者かによって修正を入れられた存在なのです。したがって、我々男性は偉そうな顔をしていますが、生物学的にいえば、女性には頭が上がらない存在なのです。

このようにあらかじめ決められた遺伝子がONとなり、それぞれの細胞がそれぞれの器官となります。また、遺伝子は外的環境によってもONとなり、眠っていた遺伝子が働きだします。

こう考えてみると、生物学的に言えば、我々人間は変わること(環境に合わせて進化すること)を前提に作られているように思います。しかしながら、不思議なことに、一般的に人は変わることに抵抗を感じるようにできています。変わらない日常に安定を感じ、平和を感じるようにできています。身体の状態を一定に維持するホメオスタシス機構がそうさせるのか、それとも古代から変わったことをして命を危険に晒した記憶が潜在意識に残っているからなのか、いずれにしても意志を持って変えないと変わらないようです。

自分を変えるための遺伝子をオンにして、今までとは違う人生のスタートを切りたいものです。

間違って魚の時の遺伝子をオンにしないようにしないといけませんね。魚になっちまったじゃないかと言おうとしても、もうパクパクとしか喋ることができないかもしれません(笑)

ちなみに会社の組織も生き物と同じで、細胞レベル(構成する人)は変わっても進化をし続けるものなのだろうと思います。(会社のみんな元気かなぁ)

リセットボタン断捨離をして身の回りの整理をしたら、次はこれまで溜まりに溜まった固定概念の掃除をします。いつの間にか身についた習慣や考えは何かのきっかけ...

参考文献

できそこないの男たち  福岡伸一(光文社新書)

生命(いのち)の暗号  村上和雄 (サンマーク文庫)

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